「AIに敬語を使うべきか」と検索してたどり着いた方へ、結論から申し上げます。指示文(プロンプト)の敬語は削ってよく、敬語は「AIに書かせる文章」の側で明示指定するのが2026年時点の最適解です。
上位の解説記事の多くは「丁寧に書けば精度が上がる」と結論づけていますが、その根拠は2024年の研究で止まっています。2025年10月のNeurIPS 2025ワークショップ論文では逆の結果が出ており、2026年5月の拡張研究では「効果はモデル依存」と結論づけられました。学術的な結論は3年で二転三転しています。
さらに、日本の実データでは生成AIに敬語で話す人はわずか15%です(NTTドコモ モバイル社会研究所、2026年7月公表)。英米の約7割とは真逆で、日本では敬語派が少数派という反直感的な事実があります。
この記事では、①指示文の敬語を削るとどれだけトークンとコストが浮くか、②出力の敬語レベルを相手別にどう指定するか、③AIが生成した敬語をどう検算するか——この3層に分けて、そのまま貼れる指定文とチェックリストまで示します。
問いの立て方を変えます。「AIに敬語を使うべきか」ではなく「敬語をどこに置くか」です。指示文=明確さ優先、出力文=敬語レベルを語彙レベルで指定、が答えです。
結論:AIプロンプトの敬語はどうすべきか?
結論は「指示文の敬語は削り、出力文の敬語は5段階で明示指定する」の2点です。敬体は常体の約2.1倍のトークンを消費し、精度向上は保証されません。
まず、いま何をすべきかを3ステップで示します。
- 指示文から社交辞令を全削除する:「お手数をおかけしますが」「何卒よろしくお願いいたします」「〜していただけますでしょうか」を消し、「〜して」「〜を出力」に置き換えます。
- 代わりに出力側の敬語レベルを1行で指定する:例「出力は社外顧客向け。尊敬語と謙譲語Iを使い分け、二重敬語を避けること」。
- 生成された敬語を10項目で検算する:二重敬語・「させていただく」過剰・バイト敬語を人間が5分でチェックします。
なぜ「敬語を使うべきか」という問い自体が誤りなのか
問いが誤っている理由は、性質の異なる2つの敬語を1つの問いに混ぜているからです。
上位記事の大半は「プロンプトに敬語を使うと出力精度が上がるか」を論じています。しかし会社員・個人事業主が実務で困っているのは、ほぼ後者——「AIに書かせたメールや謝罪文の敬語が正しいか」のほうです。
帝国データバンクの調査(2026年3月調査、n=10,312)では、企業の生成AI活用率は34.5%、用途の1位は「文章作成・要約・校正」で45.1%でした。つまり日本企業のAI利用は事実上「日本語文書=敬語の生成」が主戦場です。指示文の丁寧さを議論しても、実務課題の大半は解決しません。
指示文と出力文を分ける「3層設計」
3層に分けると、判断が一気に単純になります。
| 層 | 対象 | 敬語の扱い | 判断基準 |
|---|---|---|---|
| 第1層 | 指示文(あなたがAIに書く文) | 削る | 明確さとトークン効率 |
| 第2層 | 出力文(AIが書く文) | レベルを明示指定 | 宛先・媒体・リスク |
| 第3層 | 検品(人間の確認) | 文化庁5分類で検算 | 二重敬語・誤用の排除 |
第1層で削った労力を第2層と第3層に回す——これがこの記事の骨子です。
指示文は削る、出力文は指定する、生成物は検算する。この3層に分けた瞬間、「AIに敬語は必要か」という二択の問いは消えます。
主な原因を深掘り:なぜ「敬語が有効」という説が広まったのか

広まった原因は、2024年時点の研究結果が「無礼だと性能が下がる」と示し、それが「丁寧なら上がる」と単純化されて拡散したためです。
原因1:2024年の研究が「無礼はNG」を示した
出発点は早稲田大学・理化学研究所AIPの研究です。
尹子旗・王昊・堀尾海斗・河原大輔・関根聡『Should We Respect LLMs? A Cross-Lingual Study on the Influence of Prompt Politeness on LLM Performance』(ACL SICon 2024)では、英語・中国語・日本語で8段階の丁寧さプロンプトを検証し、無礼なプロンプトは性能を下げる一方、過度な丁寧さが最良とは限らないと報告しています。
重要なのは後半です。同研究の日本語ベンチマーク(JMMLU)では、GPT-4が最高スコアを出したのは8段階中のレベル4(中間)で73.63%でした。日本語特化のSwallow-70Bもレベル6で39.30%、レベル3で38.45%と、最上位の丁寧さではありません。
つまり2024年の時点ですでに「最も丁寧=最高性能」ではなかったのに、この論文が「AIには敬語を使うべき」という要約で紹介され続けたのが誤解の起点です。
原因2:2025年に結論が逆転した
2025年10月、逆の結果が出ます。
Om Dobariya, Akhil Kumar『Mind Your Tone: Investigating How Prompt Politeness Affects LLM Accuracy』(NeurIPS 2025 Workshop、arXiv:2510.04950)は、GPT-4oに数学・科学・歴史の4択50問を5段階のトーンで計250プロンプト投入し、次の結果を得ました。
| トーン | GPT-4oの正答率 |
|---|---|
| Very Polite(非常に丁寧) | 80.8% |
| Polite(丁寧) | 81.4% |
| Neutral(中立) | 82.2% |
| Rude(無礼) | 82.8% |
| Very Rude(非常に無礼) | 84.8% |
丁寧なほど低く、無礼なほど高いという逆転です(複数のトーン比較でp<0.05)。著者は、新しいLLMが丁寧表現を感情ではなく単なる文字列として処理している可能性を指摘しています。
この結果は「AIに無礼な言葉を使いましょう」という話ではありません。実務では暴言をテンプレ化するリスク(社内共有時の印象悪化、ログ監査)のほうが大きく、精度差は数ポイントで、指示の明確さによる差のほうがはるかに大きい点に注意してください。
原因3:2026年に「モデル依存」で決着した
2026年5月、同じ著者らが拡張研究(arXiv:2605.29027『Mind Your Tone: Does Tone Alter LLM Performance?』)を公開しました。GPT-4o・GPT-5-nano・Gemini 2.5 Flash・Gemini 2.5 Flash Liteの4モデルで再検証した結果、トーンの効果は体系的に存在するものの「極めてモデル依存的」で、モデルによって精度の変動幅が大きく異なると結論づけています。
2024年「無礼だと下がる」→2025年「無礼な方が高い」→2026年「モデル次第」。この3年の推移が意味するのは1つです。単一の「敬語は有効/無効」という一般化は、2026年時点で成立しません。
だからこそ、揺れる論点(丁寧さ)ではなく揺れない論点(明確さ・トークン効率・出力品質)に投資すべきなのです。
Anthropicの公式ドキュメント「Prompt engineering: Be clear, direct, and detailed」(2025年)も、丁寧さではなく明確さを推奨しています。判断基準は「文脈を持たない新人に指示するつもりで書く」「同僚に読ませて混乱するならAIも混乱する」です。
原因別の見分け方:あなたの悩みはどちらの敬語か
見分け方は単純です。「AIへの話しかけ方」で悩んでいるなら第1層、「AIが書いた文章の丁寧さ」で悩んでいるなら第2層・第3層です。
第1層の症状:指示文の敬語で悩んでいる場合
次の悩みは第1層です。
- 「ChatGPTに『お願いします』と付けるべきか迷う」
- 「命令形で書くと雑な回答が返る気がする」
- 「AIに失礼な気がして敬語をやめられない」
この層の答えは既に出ています。削って構いません。精度への影響はモデル依存で不確実、トークンコストは確実に増える——費用対効果が合いません。ただし後述のとおり、削るのは「社交辞令」であって「明確さ」ではありません。
第2層の症状:出力の敬語レベルで悩んでいる場合
次の悩みは第2層です。
- 「AIが書いたメールが顧客に出すには馴れ馴れしい/逆に堅すぎる」
- 「『もっと丁寧に』と指示したら、かえって読みにくくなった」
- 「社内チャットと社外メールで同じトーンになってしまう」
この層の原因は、指示語が「丁寧に」という曖昧語のままだからです。「丁寧」は0か1ではなく連続量なので、AIは「とりあえず敬語を積む」方向に振れます。解決策は語彙レベルでの指定です(後述のチャート参照)。
第3層の症状:生成された敬語が誤っている場合
次の悩みは第3層です。
- 「『拝見させていただきます』が出てきたが正しいのか分からない」
- 「『させていただく』が1通に5回出てくる」
- 「取引先に送った後で二重敬語を指摘された」
この層は、LLM側の既知の弱点です。関澤瞭・谷中瞳(東京大学)「大規模言語モデルは文脈情報を踏まえて敬語を理解しているか」(自然言語処理 31巻3号、2024年)は、敬語の容認性判断タスクと敬語変換タスクを新設してGPT-4等を評価し、統語構造が複雑な文では敬語変換性能に改善の余地がある、LLMは文脈情報に応じて敬語の文法規則を柔軟に適用しきれていない、と報告しています。
「AIが出した敬語だから正しい」という前提は成り立ちません。特に社外文書・謝罪文・官公庁提出物では、人間の検算を必ず挟んでください。
具体的な解決方法:3層それぞれの実践手順
解決方法は、第1層で敬語を削り、第2層でレベル指定文を貼り、第3層で10項目チェックを回す——この順に固定するだけです。
手順1:指示文の敬語を削る(トークン課税表)
日本語の敬体は常体の何倍のトークンを消費するのか。Qiita「タメ口が生成AIコストに与える影響 〜『お願いいたします』vs『お願い』〜」(tiktoken cl100k_baseによる実測)の測定値を基に、年間の追加入力トークンを算出しました(1日20回×年250営業日で計算)。
| 常体表現 | 常体トークン | 敬体表現 | 敬体トークン | 倍率 | 年間追加入力トークン |
|---|---|---|---|---|---|
| 連絡します | 3 | ご連絡させていただきます | 9 | 3.00倍 | +30,000 |
| これをください | 3 | こちらをいただけますでしょうか | 7 | 2.33倍 | +20,000 |
| 明日までに送ります | 6 | 明日までにお送りさせていただきます | 12 | 2.00倍 | +30,000 |
| (承知系・待機系・訪問系を含む6ペア平均) | — | — | — | 約2.1倍(209.5%) | — |
| 以下の文章を要約して | — | お手数をおかけしますが、以下の文章をご要約いただけますでしょうか。何卒よろしくお願いいたします | — | 大幅増 | 定型プロンプト1本あたりで最大の無駄 |
※ 倍率・トークン数はQiita記事の実測値(tiktoken cl100k_base)を引用。年間追加トークンは実測差分(例:+6トークン×20回×250日=+30,000トークン/年)から本記事で計算した値です。使用モデルのトークナイザによって実数は変動します。
記事1本を敬体で書いた場合は、常体比で約1.17倍・約+400トークンという実測もあります。
ここが結論です。指示文の敬語を全部削っても、出力の丁寧さは1行の指定で維持できます。 削って失うものは何もありません。
トークン増はコストだけの問題ではありません。長文の議事録や契約書を読ませるとき、社交辞令が入力上限(コンテキスト)を先に食い、肝心の本文が入りきらない事態が起きます。長文処理ほど指示文は削ってください。
手順2:出力敬語レベルを決めて指定する(決定チャート)
次に第2層です。3つの軸で自分のレベルを確定させます。
- 宛先:社外顧客/取引先担当/社内上司/社内同僚/官公庁・行政提出
- 媒体:メール/チャット/議事録・報告書/謝罪文・クレーム対応
- リスク:誤字や失礼が信用毀損に直結するか
判定の流れは次のとおりです。
- 官公庁・行政提出、または謝罪文・クレーム対応 → レベル5
- 社外顧客・初回接触の取引先 → レベル4
- 継続取引の担当者・社内上司 → レベル3
- 社内同僚・チームチャット → レベル2
- 議事録・報告書の本文(宛先なし・事実記述) → レベル1
各レベルの「そのまま貼れる指定文」「禁止表現」「出力サンプル」は次のとおりです。
レベル5(最上位・謝罪/官公庁)
- 指定文:`出力は謝罪文書として作成。尊敬語・謙譲語I・謙譲語II(丁重語)を文化庁「敬語の指針」に沿って正しく使い分け、二重敬語を用いない。「させていただく」は相手の許可・恩恵がある行為のみに限定。責任の所在を曖昧にする表現を避け、事実・原因・対応・再発防止の順に記述。`
- 禁止表現:〜のほう、〜になります、させていただいております(連続)、思います(推量による責任回避)
- 出力サンプル:`このたびは弊社の不手際によりご迷惑をおかけし、深くお詫び申し上げます。`
レベル4(社外顧客・初回取引先)
- 指定文:`尊敬語と謙譲語Iを使い分け、二重敬語を避け、「させていただく」は許可を得た行為のみに限定。美化語(お・ご)は最小限。1文は60字以内。`
- 禁止表現:拝見させていただく、お伺いいたします(重ね)、了解しました
- 出力サンプル:`ご確認いただき、ありがとうございます。修正版を本日中にお送りします。`
レベル3(継続取引先・社内上司)
- 指定文:`丁寧語(です・ます)を基調に、相手の行為にのみ尊敬語を使う。謙譲語は必要最小限。定型の前置き(お世話になっております等)は1文まで。`
- 禁止表現:定型句の重ね(お手数ですが+恐れ入りますが)、過剰な美化語
- 出力サンプル:`資料を確認しました。1点だけ、納期について相談させてください。`
レベル2(社内同僚・チャット)
- 指定文:`丁寧語のみ。尊敬語・謙譲語は使わない。前置きの挨拶は省略し、用件から書く。`
- 禁止表現:ご連絡させていただきます、〜のほう
- 出力サンプル:`明日15時から会議室Aで実施します。資料は共有済みです。`
レベル1(議事録・報告書本文)
- 指定文:`敬語を使わず、常体または簡潔な丁寧語で事実のみ記述。主語と述語を明示し、推量表現を避ける。`
- 禁止表現:〜と思われます、〜させていただきました
- 出力サンプル:`8月20日の会議で、A案の採用を決定。実装担当はB氏、期限は9月5日。`
「丁寧にして」との出力差が、この指定の価値です。
| 指示 | 典型的な出力 | 問題点 |
|---|---|---|
| もっと丁寧にして | `ご多用のところ誠に恐れ入りますが、何卒ご確認いただけますよう謹んでお願い申し上げます次第でございます。` | 冗長・二重敬語リスク・用件が埋もれる |
| レベル4の指定文 | `お忙しいところ恐れ入りますが、ご確認をお願いします。` | 用件が明確・敬語が正確 |
「丁寧に」ではなく敬語の種類名で指定する——これが第2層の全てです。文化庁の分類名(尊敬語/謙譲語I/謙譲語II/丁寧語/美化語)はAIが確実に区別できる語彙なので、指示が曖昧になりません。
手順3:生成された敬語を検算する(10項目チェックリスト)
第3層です。文化審議会答申『敬語の指針』(文化庁、2007年2月2日)は敬語を尊敬語・謙譲語I・謙譲語II(丁重語)・丁寧語・美化語の5種類に整理し、「拝見させていただく」のように同種の敬語を重ねる二重敬語は適切でないと明記しています。この5分類を基準に、人間が5分で検品する10項目です。
各項目には、AI自身に再入力して検算させる1行プロンプトを付けました。
| # | チェック項目 | NG例 → 修正例 | AIへの検算プロンプト |
|---|---|---|---|
| 1 | 二重敬語 | 拝見させていただきます → 拝見します | `二重敬語を全て指摘し、文化庁「敬語の指針」に沿って修正して` |
| 2 | 「させていただく」の乱用 | 説明させていただきます → 説明します | `「させていただく」を、許可・恩恵が実在する箇所以外すべて言い換えて` |
| 3 | 尊敬語と謙譲語Iの取り違え | (自社が)伺われます → (自社が)伺います | `自社側の行為に尊敬語が使われていないか点検して` |
| 4 | 謙譲語IIと謙譲語Iの混同 | 御社に参られます → 御社に伺います | `謙譲語Iと謙譲語II(丁重語)の使い分けが正しいか判定して` |
| 5 | 美化語の過剰 | ご資料をお送付 → 資料を送付 | `「お」「ご」の付けすぎを削り、必要な箇所だけ残して` |
| 6 | バイト敬語 | 〜のほう/〜になります/よろしかったでしょうか | `いわゆるバイト敬語を全て検出し標準的な敬語に置換して` |
| 7 | 社外文書での身内敬称 | 弊社の田中部長がおっしゃいました → 弊社の田中が申しました | `社外向け文書として、身内に敬称・尊敬語が付いていないか確認して` |
| 8 | 段落間の敬語レベルの揺れ | 冒頭は最敬体、末尾がタメ口調 | `文章全体で敬語レベルが統一されているか、揺れた箇所を指摘して` |
| 9 | 定型句の重複 | お手数ですが、恐れ入りますが〜 | `前置きの定型句が重複していないか点検し1つに統合して` |
| 10 | 宛先とレベルの整合 | 社内チャットに謝罪文レベルの敬語 | `この文章の宛先を「社内同僚」とした場合、敬語レベルが過剰でないか判定して` |
このチェックが必要な根拠は前述のとおりです。東京大学の関澤・谷中(2024年)が、LLMは統語構造が複雑な文で敬語変換を誤りうると報告しています。AIの敬語は「下書き」であって「完成品」ではありません。
第1層で削り、第2層でレベル名を指定し、第3層で10項目を検算する。3層とも1〜2分の作業なので、社外メール1通あたり5分以内で回せます。
ケース別の対処:aiプロンプトの書き方とコツを状況別に
ケース別の要点は「宛先が外に近いほど出力レベルを上げ、指示文は常に削る」です。実務で頻出する4ケースを示します。
ケース1:社外への謝罪メールを書かせる
最もリスクが高いケースです。以下の型で入力します。
``` 【状況】8/20納品予定の資料を、当方の確認漏れで8/22に遅延。相手は初回取引の顧客。 【出力】謝罪メール本文のみ。件名も付ける。 【敬語】レベル5。尊敬語・謙譲語I・謙譲語IIを正しく使い分け、二重敬語を使わない。「させていただく」は許可を得た行為のみ。 【構成】お詫び→事実→原因→対応→再発防止の順。1文60字以内。 【禁止】責任を曖昧にする推量表現、〜のほう、〜になります ```
生成後は必ずチェックリストの#1・#2・#7を確認します。謝罪文は「させていただく」が最も増える文脈です。
ケース2:社内チャットの連絡文を書かせる
逆に敬語を削るケースです。
``` 以下の内容を社内チャット用に整形。丁寧語のみ、尊敬語・謙譲語なし。挨拶の前置き禁止。用件から書く。3行以内。 (内容を貼付) ```
社内文書に過剰な敬語が入ると、要点が埋もれて読み飛ばされます。レベル2の指定はスピード目的でも有効です。
ケース3:議事録を報告書に整形させる
事実記述はレベル1が適切です。
``` 以下の議事メモを報告書形式に整形。敬語を使わず簡潔な丁寧語で事実のみ記述。決定事項・担当・期限を必ず明示。推量表現(〜と思われます)は禁止。未確定事項は「未確定」と明記。 ```
「未確定と明記させる」指定は、AIが空白を推測で埋める挙動を抑えるために入れています。
ケース4:既存文章の敬語レベルを変換させる
上位記事でも紹介される「ビジネス敬語変換」の型ですが、レベル名を入れて精度を上げます。
``` 以下の文章を、社外顧客向け(レベル4)に変換。 条件:尊敬語と謙譲語Iを使い分ける/二重敬語を使わない/美化語は最小限/原文の事実と数値を一切変更しない/変換後に「変更点」を箇条書きで3つ挙げる (文章を貼付) ```
「変更点を挙げさせる」の1行が効きます。AIが何を変えたか可視化されるため、事実の改変や過剰敬語をその場で発見できます。
業務データを入力する際は、社内の生成AI利用ルールと契約プラン(学習利用の有無)を必ず確認してください。顧客名・取引金額・個人情報は伏せ字にするか、学習に使われない設定のプランで扱うのが安全です。
予防・再発防止のコツ:aiプロンプトのコツを定着させる
再発防止のコツは、判断を毎回考えず「テンプレ化して選ぶだけ」の状態にすることです。
コツ1:レベル指定文をスニペット登録する
レベル1〜5の指定文を、テキスト展開ツールやメモアプリに登録します。毎回書くと必ず省略され、「丁寧に」という曖昧語に戻ります。選ぶだけの状態にするのが定着の条件です。
コツ2:指示文の型を「4ブロック」に固定する
毎回書く型を固定します。
- 【状況】:前提・背景・相手
- 【出力】:何を、どの形式で、どの長さで
- 【敬語】:レベル番号+敬語種別の指定
- 【禁止】:使わせない表現
この4ブロックには社交辞令が入る余地がありません。「aiプロンプトの書き方」を一言でいえば、曖昧語を数えられる指示に置き換える作業です。丁寧さは、この型のブロック3に格納されます。
コツ3:チェックリストをAIに常駐させる
カスタム指示(ChatGPTのCustom Instructions、ClaudeのProjects等)に「日本語出力時は二重敬語と『させていただく』の乱用を避ける」を登録しておくと、第3層の作業量が減ります。ただし完全には防げないため、社外文書では人間の確認を省略しないでください。
コツ4:日本の実態を知っておく
NTTドコモ モバイル社会研究所の「2026年 生成AI利用意識・行動調査」(2026年7月16日公表、n=7,223、2026年2月調査)によると、生成AI利用者のうち「敬語で話すことが多い」は全体15%。男性30代22%、男性10代21%、女性10代12%です。
一方、英国71%・米国67%が「AIに礼儀正しく接する」と回答しています(Future社2024年12月調査/TechRadar報道)。米国の12%は「AIが将来意識を持ったとき覚えていてほしいから」という理由でした。
日本では敬語派が15%の少数派です。「みんな敬語で話しているらしい」という前提自体が、日本では成立していません。周囲に合わせる必要はなく、目的(精度・コスト・出力品質)で決めて構いません。
専門家・公的情報の見解:生成aiのプロンプト例と公式指針
公的・公式の指針は一貫して「丁寧さ」ではなく「明確さ」を推奨しています。
Anthropicの公式指針は「明確・直接・詳細に」
Anthropic公式ドキュメント「Prompt engineering: Be clear, direct, and detailed」(2025年)は、プロンプト設計の第一原則として明確さを挙げ、判断基準として「文脈を持たない新人に指示するつもりで書く」「同僚に読ませて混乱するならClaudeも混乱する」を示しています。
丁寧さは原則に含まれていません。ここから導ける生成AIのプロンプト例は、次のような形です。
``` 【状況】ECサイトの問い合わせ対応。相手は購入後3日で返品希望の一般顧客。返品規定は未開封7日以内。 【出力】返信メール本文。件名込みで400字以内。 【敬語】レベル4。尊敬語と謙譲語Iを使い分け、二重敬語を避ける。 【禁止】規定にない例外の約束、「〜のほう」「〜になります」 ```
「新人に指示するつもりで」を実践すると、自然にこの粒度になります。背景・条件・禁止事項を書くほうが、敬語を足すよりはるかに精度に効きます。
文化庁『敬語の指針』は5分類が基準
文化審議会答申『敬語の指針』(文化庁、2007年2月2日)は、敬語を尊敬語・謙譲語I・謙譲語II(丁重語)・丁寧語・美化語の5種類に整理し、「拝見させていただく」のように同種の敬語を重ねる二重敬語は適切でないと明記しています。
この5分類は、AIへの指示語としてそのまま使えます。「丁寧に」は主観ですが、「尊敬語と謙譲語Iを使い分けて」は客観的な文法指定です。
公的統計が示す「日本語文書生成が主戦場」という現実
- 総務省『令和7年版 情報通信白書』(2025年):日本の個人の生成AI利用率は26.7%で前回調査の約3倍。ただし中国81.2%・米国68.8%・ドイツ59.2%に大きく劣ります。企業は日本55.2%(中国95.8%・米国90.6%・ドイツ90.3%)。
- 帝国データバンク「生成AIに関する企業の動向調査」(2026年3月調査、n=10,312):業務での活用は34.5%(大企業46.5%/中小32.4%/小規模28.0%)、用途1位は「文章作成・要約・校正」45.1%。
- 内閣府 消費者委員会事務局「生成AI利用者の利用実態に関するアンケート結果(速報)」(令和8年3月31日、n=1,442):毎日利用が2割超、過半数が「利用頻度が増えている」と回答。
日常業務に定着し、用途の中心が文書作成である以上、磨くべきは「指示文の敬語」ではなく「出力文の敬語品質」だと公的データも示しています。
電力コストの話題も知られています。Sam Altmanは、ユーザーの「please/thank you」による電力コストを「数千万ドル。よく使われた金だ」とX上で回答しました(TechRadar、2025年4月報道)。1クエリあたりの消費電力は0.34Wh・水0.000085ガロンという公表値もあります。個人の判断材料としては小さい値ですが、業務での定型プロンプトは回数が積み上がる点に留意してください。
やってはいけないNG対応
NG対応の共通点は、「敬語を足せば安全」という思い込みで作業を増やしてしまうことです。5つ挙げます。
NG1:精度目的で指示文に敬語を積む
2026年時点で効果はモデル依存です(arXiv:2605.29027)。確実なのはトークン増だけなので、精度を上げたいなら背景・条件・出力形式を書き足してください。
NG2:「もっと丁寧に」と繰り返す
曖昧語の反復は、二重敬語と「させていただく」の積み増しを招きます。回数を重ねるほど劣化する典型パターンです。レベル名と敬語種別で指定してください。
NG3:無礼なプロンプトをテンプレ化する
2025年の研究で無礼なトーンの正答率が高かったからといって、暴言をテンプレ化するのは避けてください。精度差は数ポイントにとどまる一方、社内共有時の印象やログ監査上のリスクが残ります。丁寧さを削るのと無礼になるのは別の行為です。
NG4:AIが書いた敬語を無検算で社外送信する
東京大学の関澤・谷中(2024年)が示すとおり、LLMは複雑な統語構造で敬語変換を誤りえます。社外文書・謝罪文・官公庁提出物では、必ず10項目チェックを通してください。
NG5:機密情報を含む文面をそのまま貼る
顧客名・取引金額・個人情報・未公開情報を、社内ルールを確認せずに入力するのは避けてください。学習利用の有無はプランと設定で異なります。著作物の全文投入も、社内規程と権利関係の確認が必要です。
「敬語を整える」作業と「機密を守る」作業は別物です。文面の丁寧さを気にする前に、その情報を入力してよいかを確認してください。判断に迷う場合は、固有名詞を伏せ字にしてから入力するのが現実的な運用です。
まとめ:明日から変えること
要点は3つです。
- 指示文の敬語は削る:敬体は常体の約2.1倍のトークンを消費し、精度向上はモデル依存で不確実です(Qiita実測/arXiv:2605.29027)。
- 出力の敬語はレベル指定する:宛先・媒体・リスクの3軸でレベル1〜5を決め、文化庁5分類の名称で指定します。
- 生成された敬語は検算する:二重敬語・「させていただく」乱用・バイト敬語を10項目でチェックします。
今日やることは1つで十分です。よく使うプロンプトを1本開き、社交辞令を削って、代わりに「【敬語】レベル4。尊敬語と謙譲語Iを使い分け、二重敬語を避ける」の1行を足してください。それだけで、コストは下がり、出力の丁寧さは安定します。
よくある質問
AIプロンプトとは何ですか?
プロンプトとは、生成AIに出力させるために入力する指示文のことです。単なる質問文ではなく、「状況・出力形式・制約・禁止事項」を含む設計物と捉えると精度が安定します。本記事の4ブロック型(【状況】【出力】【敬語】【禁止】)が最小構成です。Anthropicの公式指針(2025年)も「文脈を持たない新人に指示するつもりで書く」ことを判断基準としています。
aiプロンプトの書き方で最も重要なコツは何ですか?
最重要のコツは、曖昧な形容詞を数えられる指定に置き換えることです。「丁寧に」→「レベル4、尊敬語と謙譲語Iを使い分け二重敬語を避ける」、「短く」→「400字以内」、「分かりやすく」→「1文60字以内・箇条書き5点」のように変換します。丁寧さを足すより、この置き換えのほうが出力品質への効果が大きくなります。
AIに敬語を使わないと出力が雑になりませんか?
雑になるのは敬語を削ったからではなく、情報を削ったからです。「〜していただけますでしょうか」を「〜して」に変えても情報量は変わりませんが、条件や背景まで削ると当然精度は落ちます。削るのは社交辞令だけで、状況・制約・出力形式は残してください。なお2024年の早稲田大・理研AIP研究でも、日本語ではGPT-4の最高スコアは8段階中レベル4(中間)の73.63%であり、最上位の丁寧さが最良ではありませんでした。
生成AIのプロンプト例で、敬語レベルを指定する一番短い書き方は?
最短は1行です。`【敬語】社外顧客向け。尊敬語と謙譲語Iを使い分け、二重敬語を避け、「させていただく」は許可を得た行為のみ。` これを既存プロンプトの末尾に貼るだけで、「丁寧にして」より安定します。社内向けなら `【敬語】丁寧語のみ。尊敬語・謙譲語なし。挨拶の前置き禁止。` に差し替えてください。
AIが二重敬語を出したかどうか、自分で判断できません
判断に自信がない場合は、AI自身に検算させたうえで文化庁の基準を確認するのが確実です。`二重敬語を全て指摘し、文化庁「敬語の指針」に沿って修正して` と再入力し、指摘された箇所を『敬語の指針』(文化庁、2007年)の5分類に照らして確認します。ただし東京大学の関澤・谷中(2024年)が示すとおりLLMの敬語判定は完璧ではないため、社外文書では人間の最終確認を残してください。




