chatgpt翻訳の入口は4つ|誰が読むかで選ぶ業務ルール
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chatgpt翻訳の入口は4つ|誰が読むかで選ぶ業務ルール

ChatGPT翻訳で最初にやるべきことは、「どの入口から翻訳するか」を先に決めることです。ChatGPTの翻訳は1つの機能ではなく、通常チャット・ChatGPT Translate・音声モード・APIという4つの入口があり、料金もデータの扱いも別物だからです。

そして入口を選ぶ基準は「何を訳すか」ではありません。日本翻訳連盟(JTF)が2026年6月の基調講演で指摘したとおり、決め手は「その訳文を誰が読むか」です。自分だけが読むメモと、顧客に出す見積書と、官公庁に提出する書類では、必要なチェックの深さがまるで違います。

この記事では、4つの入口の比較表、読み手×機密度で入口を振り分ける判断チャート、社外提出前の12項目チェックリストまで、そのまま社内ルールに転用できる形でまとめます。

ポイント

会社としてChatGPT Businessを契約していても、社員がログイン不要の無料入口で翻訳すれば、その保護は効きません。入口の統一こそが最初のルールです。

結論:まず何をすべきか?最初の3ステップ

結論は、①入口を1つに固定する ②用語集を常駐させる ③読み手別のチェック水準を決める、この3ステップです。プロンプトの書き方を覚えるより先に、この3つを決めるほうが事故を防げます。

ステップ1:会社・個人で使う入口を固定する

最初にやるのは、翻訳に使う入口を1つに決めることです。

  1. 業務で使う入口を「ログイン済みの通常チャット」に統一する
  2. 個人プランを使う場合は、設定→データコントロールで学習利用をオフにする
  3. 機密を含む文書は、ログアウト状態のChatGPT Translateを使わないと明文化する

ログイン不要で使える入口は便利ですが、契約プランによる保護の外側です。「便利だから使う」を放置すると、会社の契約が意味をなさなくなります。

ステップ2:用語集をプロジェクト/カスタム指示に常駐させる

次にやるのは、社名・製品名・役職名の対訳リストを固定化することです。

ChatGPT翻訳の最大の実務課題は精度そのものより「再現性のなさ」です。同じ原文でも実行のたびに訳語が変わり、シリーズ文書で用語がブレます。毎回プロンプトに貼るのではなく、プロジェクト機能やカスタム指示に用語集を置き、全会話で自動適用させてください。

ステップ3:読み手別に2段階のチェック水準を決める

最後に、チェックの深さを2段階に分けます。

機械翻訳の後編集には ISO 18587:2017 という国際規格があり、フルポストエディットとライトポストエディットという2つの修正水準が規定されています(アジア太平洋機械翻訳協会・日本規格協会)。この考え方は社内ルールにそのまま翻案できます。

  • ライトPE相当:意味が通ればよい。自分用・理解目的の文書
  • フルPE相当:原文と同等の品質まで直す。社外に出る文書
まとめ

入口の固定・用語集の常駐・チェック水準の2段階化。この3点を決めてから、はじめてプロンプトの話に進んでください。

ChatGPT翻訳の入口は4つ|違いは何か?

ChatGPT翻訳の入口は4つ|違いは何か?

ChatGPT翻訳の入口は通常チャット・ChatGPT Translate・音声モード・APIの4つで、ログイン要否・実費・データの扱い・添付可否がすべて異なります。同じ「ChatGPTで翻訳」でもリスクは別物です。

4つの入口の比較表

項目①通常チャット<br>(chatgpt.com)②ChatGPT Translate<br>(chatgpt.com/translate)③音声モード<br>リアルタイム翻訳④API<br>(gpt-realtime-translate)
ログイン要否必要不要必要APIキーが必要
実費(2026年時点)無料/Go 1,400円/Plus 3,000円/Pro 30,000円(税込)/Business 年払い20ドル・席無料有料プラン中心0.034ドル/分
入力が既定で学習に使われるか個人プランは既定オン(設定→データコントロールでオフ)/Business・Enterpriseは既定オフログアウト利用はSettingsの「Improve the model for everyone」でしか制御できない所属プランの設定に従う既定で学習に使われない
PDF等の添付可(1ファイル512MB/1メッセージ20ファイル)不可(テキスト貼り付け中心)不可音声ストリーム
長文の扱い・訳抜けリスク分割すれば安定。一括投入だと要約されやすい短〜中文向き。長文は分割必須逐次のため訳抜けは起きにくいが聞き取り依存逐次処理
トーン/敬体の指定自由に指定可ビジネス調・平易・子ども向けなどワンタッププロンプトで指定実装側で制御
向く用途業務文書・PDF・シリーズ文書私用の短文、外出先での即席翻訳会議・接客・現地での会話自社サービスへの組み込み
使ってはいけない用途契約書・特許の最終版(人手校正必須)機密・個人情報・社外提出物機密会議規約・法令確認前の本番投入
注意

上表の最重要行はデータの扱いです。会社としてBusinessを契約していても、社員が②を無料で使えばその保護は効きません。 契約は「席」に紐づくのであって、社員個人の行動を自動的には縛らないからです。

ChatGPT Translateとは何か?(2026年1月公開)

ChatGPT Translateは、2026年1月15日に公式発表なしで公開された翻訳専用Webアプリです。

翻訳業界メディアSlator(2026年)によると、chatgpt.com/translate で提供され、50以上の言語に対応し、有料サブスクリプション不要で利用できます。原文/訳文の2ペインUIで、訳文を「ビジネス向け」「より平易に」「子ども向け」などにワンタップで書き換えられ、「なぜその訳になったか」を追加で質問することもできます。公開時点で音声・画像翻訳は未実装でした。

手軽さは圧倒的ですが、ログイン不要ということは、会社のプラン保護が及ばないということでもあります。私用の短文には最適、業務文書には不適、と割り切ってください。

音声・APIという2つの入口

音声入口は「その場の会話」、API入口は「自社サービスへの組み込み」用です。

OpenAIの開発者ドキュメント(2026年)によると、gpt-realtime-translate はストリーミング音声間翻訳モデルで、原音声が届いている最中に翻訳音声とテキスト差分を返します。2026年5月7日の発表では、入力70言語以上から出力13言語に対応し、話者のペースに合わせて逐次通訳する専用モデルとされています。価格は1分あたり0.034ドルです。

補足

1分0.034ドルは、1時間の会議で約2ドル程度の計算です。ただしこれはAPI実装が前提で、通常のChatGPTアプリの音声モードとは別物です。

なぜ訳文がブレるのか?主な原因を深掘り

ChatGPT翻訳のトラブルは「再現性のなさ」「入力形式の問題」「指示の曖昧さ」の3つにほぼ集約されます。精度が低いのではなく、条件を固定していないことが原因です。

原因1:同じ原文でも訳語が変わる(再現性の問題)

最も見落とされているのが、実行のたびに訳語が変わることです。

生成AIは確率的に文を組み立てるため、「販売代理店」が1回目は distributor、2回目は sales agent になる、といったブレが起きます。1回の翻訳では気づかず、シリーズ文書や改訂版で表記が割れて初めて発覚します。

上位の解説記事はここをほとんど扱っていませんが、実務では精度以上に致命的です。用語がブレた資料は、読み手に「別の概念」だと誤解させます。

原因2:PDF・画像など入力形式に起因する崩れ

次に多いのが、そもそもテキストとして読めていないケースです。

  • スキャンPDF:紙をスキャンした画像PDFにはテキスト層がなく、文字として抽出できない
  • 段組み・図表混在:2段組みの左右をまたいで読み込み、文の順序が入れ替わる
  • ページ数過多:長大なファイルはトークン上限に触れ、途中から要約や省略に切り替わる

原因3:指示が曖昧で「翻訳」以上のことをされる

3つ目は、指示が短すぎて余計な加工が入るパターンです。

「翻訳して」とだけ書くと、原文にない説明が足されたり、丁寧すぎる意訳になったりします。読み手・用途・敬体・出力形式を明示しないと、AIは「良かれと思って」書き換えます。

ポイント

ブレ・崩れ・過剰翻訳の3つは、いずれも指示と入力形式を固定するだけで大半が消えます。モデルを変える前に条件を固定してください。

原因別の見分け方|どこで失敗したか特定する

訳文がおかしいときは、原文抽出・訳出・指示のどの段階で壊れたかを切り分けるのが先決です。やみくもに翻訳し直しても同じ結果になります。

見分け方1:段落数・箇条書き数を数える

訳抜けを一発で検出する方法は、原文と訳文の構造を数えることです。

  1. 原文の段落数と箇条書きの項目数を数える
  2. 訳文の段落数と項目数を数える
  3. 数が合わなければ、訳抜けか統合が起きている
  4. 合わない箇所の前後を原文と1文ずつ突き合わせる

数字の比較なので、対象言語が読めなくても実行できるのが利点です。

見分け方2:もう一度同じ原文を翻訳させて差分を見る

用語のブレを検出するには、同じ原文をもう一度翻訳させて比較します

新しいチャットを開き、同じ原文・同じ指示で翻訳させて、1回目と訳語が違う箇所を洗い出します。ここで揺れた語こそが「確定させるべき用語」です。そのまま用語集に追加すれば、次回から固定できます。

見分け方3:PDFが読めているかを最初に確認する

PDFの問題は、翻訳させる前に確認できます。

PDFをブラウザやビューアで開き、本文をマウスで選択できるか試してください。選択できなければテキスト層がないスキャンPDFで、OCR処理が先に必要です。選択できるのにレイアウトが崩れる場合は、段組みや図表が原因なので、必要箇所だけテキストで貼り直すのが確実です。

補足

「AIの精度が低い」と判断する前に、この3つの切り分けをしてください。多くは入力側の問題で、モデルを変えても解決しません。

具体的な解決方法|プロンプトと運用の型

解決策は「用途別プロンプト4本」と「用語集の常駐」の2本立てです。毎回ゼロから書かず、型を使い回すほうが結果が安定します。

業務で使える翻訳プロンプトのテンプレート

まずは基本の型です。読み手・目的・トーン・制約を必ず含めます。

① ビジネスメール(日→英)

``` 以下の日本語メールを英語に翻訳してください。 ・読み手:海外取引先の購買担当(面識あり・1年以上の取引) ・トーン:丁寧だが簡潔なビジネス英語 ・制約:原文にない情報を足さない/固有名詞は原文表記のまま維持 ・出力:訳文のみ。解説不要

【原文】 (ここに本文) ```

② 社内共有用(英→日・速度優先)

``` 以下の英文を日本語に翻訳してください。 ・目的:社内共有。意味が正確に伝わることを最優先 ・トーン:です・ます調 ・制約:意訳しすぎない/専門用語は初出時に(原語)を併記 ・出力:原文の段落構成をそのまま維持 ```

③ 用語を固定する(シリーズ文書向け)

``` 以下の用語集に必ず従って翻訳してください。用語集にある語は他の訳語を使わないでください。 【用語集】 ・認定パートナー → Certified Partner ・収支表 → Profit and Loss Statement ・案件 → Project(Dealは使用しない)

【原文】 (ここに本文) ```

④ 訳文をチェックさせる(逆翻訳)

``` 以下の英文を日本語に「直訳で」戻してください。意訳・補足は禁止です。 そのうえで、元の日本語原文と意味がずれている箇所を箇条書きで指摘してください。 ```

④は自分でチェックできない言語のときに有効です。直訳指定にしないと、AIが原文に寄せて辻褄を合わせてしまう点だけ注意してください。

用語集を常駐させる手順

用語集は毎回貼るのではなく、仕組みとして常駐させます

  1. 社名・製品名・役職名・部署名の対訳を20〜50語で作る
  2. ChatGPTのプロジェクト機能を作り、プロジェクト指示に用語集を貼る
  3. 翻訳作業はすべてそのプロジェクト内で行う
  4. 訳語がブレた語を見つけたら、その都度用語集に追記する
  5. 四半期に一度、社内で用語集をレビューする

個人プランでプロジェクト機能を使わない場合は、カスタム指示に入れる方法でも代用できます。

ChatGPTのPDF翻訳がうまくいかない場合の対処

PDF翻訳は「テキスト層の有無」「分割」「出力形式の指定」の3点で解決します。

  1. PDFの本文が選択できるか確認する(できなければOCRしてから)
  2. 20ページを超えるなら章単位で分割する(1メッセージ20ファイル・1ファイル512MBが上限)
  3. 「表は表のまま、Markdown形式で出力してください」と形式を指定する
  4. 図表内の文字は拾えないことがあるため、重要な数値は別途テキストで渡す
  5. 出力後、原文と段落数を突き合わせて訳抜けを確認する
注意

見積書・契約書のPDFをそのままアップロードするのは避けてください。金額・取引条件・個人名は機密情報です。渡す前に該当箇所をマスキングするか、Business/Enterprise席に限定する運用にしてください。

ケース別の対処|読み手で使い分ける判断チャート

どの入口を使いどこまで直すかは、「読み手」と「機密度」の2軸だけで決まります。文書の種類(メール/マニュアル/契約書)で分けるより、判断がぶれません。

JTFの2026年6月9日の基調講演(JTF会長 二宮俊一郎氏)では、事業会社の回答者209名のうち173名(約82%)が業務で機械/AI翻訳を日常的に使用し、文書の種類以上に「誰が読むのか」がチェックの必要性を決めると指摘されています。以下はその基準を、ISO 18587のフル/ライトPEの考え方と組み合わせた振り分けです。

「読み手×機密度」入口ふるい分けチャート

``` Q1. その訳文を読むのは自分(または意味が通れば十分な相手)か? │ ├─ YES →【レベルA:ライトPE相当】 │ 入口:無料入口でOK(②ChatGPT Translate可) │ チェック:意味が通ることだけ確認 │ 目安時間:A4 1枚あたり 2〜3分 │ └─ NO ↓ Q2. その訳文は社外(顧客・取引先・不特定多数・官公庁)に出るか? │ ├─ NO(社内共有)→【レベルB:ライトPE+用語集突合】 │ 入口:ログイン済み①通常チャット │ チェック:用語集突合+段落数の一致確認 │ 目安時間:A4 1枚あたり 10〜15分 │ └─ YES ↓ Q3. 機密情報・個人情報・金額や契約条件を含むか? │ ├─ NO →【レベルC:フルPE相当】 │ 入口:Business席の①通常チャット │ チェック:後述の12項目すべて+バイリンガル1名の確認 │ 目安時間:A4 1枚あたり 30〜45分 │ └─ YES →【レベルD:最上位】 入口:Business/Enterprise席のみ。無料入口は禁止 チェック:人手フルPE+原文の一部マスキング 例外:契約書・特許・行政提出物は専門翻訳会社へ 目安時間:外注含め 数日 ```

レベル別の具体ケース

実際の業務に当てはめると次のようになります。

  • レベルA:海外ニュースの内容把握、英語のマニュアルを自分が読むための翻訳
  • レベルB:海外拠点から届いた報告書の社内共有、英語資料の要点まとめ
  • レベルC:取引先への案内メール、製品紹介資料、採用ページの英語版
  • レベルD:業務委託契約書、料金表、個人情報を含む申請書類、行政提出物
ポイント

このチャートの価値は、「どこまで手を抜いてよいか」を明文化できる点にあります。すべてを厳格にすると誰も守らず、すべてを緩くすると事故が起きます。

予防・再発防止のコツ|社内ルールへの落とし込み

再発防止の要点は「入口の統一」「用語集の更新」「ログの残し方」の3つです。個人の注意力に頼るルールは必ず形骸化します。

1. 入口を統一し、抜け道を先に塞ぐ

ルールの一文目は「業務翻訳はログイン済みの会社アカウントで行う」です。

禁止事項を書くだけでは足りません。社員が無料入口を使う理由は、たいてい「そのほうが速いから」です。会社アカウントでの翻訳手順をブックマーク1つで開ける状態にして、正規ルートを最短にすることが実効的な対策になります。

2. 用語集を「生きた資産」として更新する

用語集は作って終わりにせず、翻訳のたびに追記します。

訳語がブレた語を見つけた担当者が、その場で用語集に1行追加する。この運用が回ると、半年後には自社専用の翻訳資産になります。ChatGPTの再現性のなさは、外部の用語集で補うのが最も確実です。

3. 何を入力したかの記録を残す

事故が起きたときに問題になるのは「何を入れたか分からない」状態です。

重要文書を翻訳した際は、日付・原文の種類・使用した入口・チェック者を1行で残しておいてください。総務省の令和7年版情報通信白書(2025年)によると、企業が生成AI導入で挙げる懸念事項は「効果的な活用方法がわからない」が最多で、次いで「社内情報の漏えい等のセキュリティリスク」「ランニングコスト」「初期コスト」が続きます。記録は後者2つの不安に対する具体的な回答になります。

まとめ

予防策は「禁止する」より「正規ルートを最短にする」ほうが機能します。ルールと利便性が衝突したとき、勝つのはたいてい利便性です。

専門家・公的情報の見解|法令とガイドラインの確認

公的機関の見解で押さえるべきは、個人情報を含むプロンプト入力には利用目的の範囲内かの確認が要るという点です。「入れてはいけない」ではなく「確認が必要」という整理です。

個人情報保護委員会の注意喚起

個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」(2023年)では、個人情報取扱事業者向けの注意点として、生成AIサービスに個人情報を含むプロンプトを入力する場合、特定された利用目的の達成に必要な範囲内であることを十分に確認する必要があるとされています。

生成AIサービスに個人情報を含むプロンプトを入力する場合、特定された利用目的の達成に必要な範囲内であることを十分に確認する必要がある(個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」2023年)

実務に落とすと、顧客名簿や履歴書、個人名入りのメールをそのまま翻訳させる前に、自社のプライバシーポリシーに書かれた利用目的の範囲内かを確認する、ということです。判断に迷う場合は、氏名や連絡先を伏せ字にしてから翻訳するのが安全です。

日本の生成AI利用率はまだ低い

総務省 令和7年版情報通信白書(2025年)によると、日本の個人の生成AI利用経験率は26.7%で、米国68.8%、中国81.2%、ドイツ59.2%に大きく遅れています。

この数字は「社内でまだ浸透していない」ことが特別ではないと示す一方、翻訳は最も導入しやすい入口でもあります。JTF調査で事業会社の約82%が機械/AI翻訳を日常的に使っていたのは、翻訳が実務効果を出しやすい領域だからです。

後編集の国際規格 ISO 18587

機械翻訳の後編集には、ISO 18587:2017(Translation services — Post-editing of machine translation output — Requirements)という国際規格があります。

日本規格協会およびアジア太平洋機械翻訳協会(AAMT)の資料によると、この規格ではフルポストエディットとライトポストエディットの修正水準、ポストエディターの資格・訓練要件が規定されています。社内ルールを一から考えるより、この2水準の枠組みを借りるほうが早く、外部への説明もしやすくなります。

補足

ISO 18587は翻訳サービス提供者向けの規格であり、一般企業が認証を取る必要はありません。考え方だけを借りるのが現実的な使い方です。

やってはいけないNG対応|5つの落とし穴

避けるべきは「無料入口への機密投入」「一発翻訳の丸投げ」「無検証の社外提出」を筆頭とする5つです。いずれも実際に起きやすい失敗です。

NG1:ログアウト状態で機密文書を翻訳する

最も危険なのがこれです。ログイン不要の入口は手軽ですが、会社が契約したプランの保護対象外です。Business/Enterpriseは既定で学習に使われませんが、その保証は席にログインして初めて効きます。

NG2:長文を一度に投げて、出てきた訳文をそのまま使う

長文を一括投入すると、途中から要約や省略に切り替わることがあります。段落数の突き合わせをせずに使うと、1段落まるごと消えていても気づけません

NG3:チェックせずに社外へ出す

AI翻訳は「もっともらしい間違い」を出します。文法的に自然で読みやすいぶん、内容の誤りが見つけにくいのが厄介な点です。読み手が社外なら、必ず人の目を通してください。

NG4:用語集なしでシリーズ文書を訳す

1本目と2本目で製品名や役職名の訳が変わると、読み手は別物だと受け取ります。複数回に分けて訳す文書ほど、用語集の効果が大きくなります。

NG5:料金を古い情報のまま比較する

2026年1月30日にChatGPTの日本向け料金が円建てへ移行しました(ITmedia AI+ 2026年1月30日)。Go 1,400円、Plus 3,000円、Pro 30,000円(いずれも税込)です。移行当初は既存のドル建て契約ユーザーがドル建て表示のままで、2026年2月24日には契約をいったん打ち切ることで円建て料金に切り替わる運用が案内されました(最上位Proは実質約4,000円の値下げ)。

参考:翻訳用途での料金比較(2026年時点)

プラン月額翻訳用途での位置づけ
ChatGPT無料0円短文の理解目的
ChatGPT Go1,400円(税込)個人事業主の日常業務
ChatGPT Plus3,000円(税込)PDF・長文を扱う実務
ChatGPT Business年払い20ドル/席(最低2席)会社として使うなら必須
DeepL Starter1,200円翻訳専用・定型文書向け
DeepL Advanced3,800円文書翻訳量が多い場合

DeepLの料金はAI PICKS「DeepLの料金プラン 全比較【2026最新】」、ChatGPT Businessの価格は2026年4月2日の値下げ報道(年払い1席25ドル→20ドル、月払い30ドル→25ドル)に基づきます。なおDeepL無料版はテキスト翻訳1回5,000文字まで、ドキュメント翻訳は月3ファイル・1ファイル5MBまでという制限があります。

注意

料金・仕様はいずれも2026年時点の情報です。契約前に必ず公式サイトで最新の価格とプラン条件を確認してください。

よくある質問

ChatGPTの翻訳は無料でどこまで使えますか?

短文の理解目的なら無料で十分です。ChatGPT Translate(chatgpt.com/translate)はログイン不要・無料で50以上の言語に対応し(Slator 2026年1月15日)、通常チャットの無料枠でも翻訳はできます。ただし無料入口は機密情報・社外提出物には使わないでください。PDF添付や長文を安定して扱うなら、Go(月1,400円・税込)以上が現実的です。

ChatGPTの翻訳精度はDeepLと比べてどうですか?

用途で優劣が分かれます。DeepLは原文に忠実な直訳寄りで定型文書に強く、ChatGPTは文脈やトーンを汲んだ自然な訳を出しやすいのが特徴です。一方でChatGPTには同じ原文でも実行のたびに訳語が変わる「再現性のなさ」があり、シリーズ文書では用語集の常駐が必須になります。精度の差より、この再現性の差のほうが実務では効きます。

ChatGPTでPDFを翻訳するにはどうすればいいですか?

ファイルを添付して翻訳を指示しますが、うまくいかない場合は原因の切り分けが必要です。PDF本文がマウスで選択できなければテキスト層のないスキャンPDFなので、先にOCRが必要です。選択できるのに崩れる場合は段組みや図表が原因なので、必要箇所をテキストで貼り直してください。ページ数が多いときは章単位に分割します(上限は1ファイル512MB・1メッセージ20ファイル)。翻訳後は原文と段落数を突き合わせて訳抜けを確認してください。

ChatGPTでリアルタイム翻訳はできますか?

できますが、入口によって性質が異なります。アプリの音声モードは会話の場でその都度訳す使い方に向きます。より本格的な逐次通訳をシステムに組み込むなら、OpenAIが2026年5月7日に発表したgpt-realtime-translateがあり、入力70言語以上から出力13言語へ、話者のペースに合わせて翻訳します。価格は1分あたり0.034ドルです(OpenAI開発者ドキュメント)。機密性の高い会議での使用は、事前に社内ルールを確認してください。

翻訳プロンプトはどう書けば精度が上がりますか?

「読み手・目的・トーン・制約・出力形式」の5点を明示すると安定します。特に効くのが「原文にない情報を足さない」「固有名詞は原文表記のまま維持」「訳文のみ出力」の3つの制約です。さらにシリーズ文書では用語集をプロジェクト指示やカスタム指示に常駐させ、毎回同じ条件で翻訳させることが再現性の確保につながります。

まとめ|今日からできる3つのこと

ChatGPT翻訳を業務で使うなら、覚えるべきはプロンプトより運用ルールです。

  1. 入口を固定する:業務翻訳はログイン済みの会社アカウントで行い、ログアウト利用の無料入口は私用の短文に限定する
  2. 用語集を常駐させる:社名・製品名・役職名20〜50語をプロジェクト指示に置き、訳語のブレを潰す
  3. 読み手でチェック水準を分ける:自分用はライトPE、社外提出はフルPE+12項目チェックの2段階にする
まとめ

ChatGPT翻訳の成否を分けるのは、モデルの性能ではなく「誰が読むか」で運用を変えられているかです。まずは自分のチームの正規ルートを1つ決めることから始めてください。

付録:社外提出前12項目チェックリスト

生成AIの誤りが集中する箇所だけに絞ったチェックリストです。レベルC以上の文書で使ってください。

  • [ ] ①数字の桁:万・億と million / billion の換算が正しいか(1億=100 million)
  • [ ] ②単位:㎡とsq ft、円とドル、℃と℉が混ざっていないか
  • [ ] ③日付形式:月日が逆転していないか(3/4 が March 4 か April 3 か)
  • [ ] ④固有名詞:社名・製品名が公式の正式表記になっているか
  • [ ] ⑤人名と敬称:宛名の綴りと敬称(Mr./Ms./Dr.)が正しいか
  • [ ] ⑥役職名:部長・課長などの対訳が社内で統一されているか
  • [ ] ⑦否定・条件節:「〜でない限り/unless」の意味が反転していないか
  • [ ] ⑧義務の強弱:「〜する予定(will)」と「〜しなければならない(must)」を取り違えていないか
  • [ ] ⑨段落数・項目数の一致:原文と訳文の段落数・箇条書き項目数を数え、一致するか(訳抜け検出
  • [ ] ⑩過剰翻訳の検出:原文にない補足や説明が足されていないか
  • [ ] ⑪用語集との突合:登録済みの用語がすべて指定どおりの訳語になっているか
  • [ ] ⑫再翻訳での揺れ確認:新しいチャットで同じ原文を翻訳させ、訳語が変わった箇所を洗い出して確定させる

⑨と⑫は、対象言語が読めなくても実行できる検出手法です。訳文を評価できない言語ほど、この2つが効きます。

注意

契約書・特許・行政提出物については、このチェックリストで代替せず、専門の翻訳会社に依頼してください。責任の所在が変わります。

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