ランキングを読む前に|信じてよい順位の選び方3基準
基準1|発表年を確認する
基準2|対象国を確認する
基準3|「職業単位」か「タスク単位」かを確認する
「49%が代替可能」も「9%」も、どちらも間違いではありません。数え方が違うだけです。ただし、発表年も数え方も伏せたまま順位だけ並べた記事は、読者が自分の状況に当てはめる材料を渡していません。
chatgpt なくなる仕事 ランキングは本当か?出典年で答え合わせした一覧表

| 職種 | ランキングでの扱い | 根拠の出典・発表年・対象国 | 日本の有効求人倍率(令和8年7月) | 日本の就業者規模(2024年平均) | ILO曝露度 | 日本で実際に起きている形 | 結論 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 一般事務 | 1〜3位常連 | 野村総研2015/日本、ILO2025/世界 | 0.28倍 | 事務従事者 男女計 約1,419万人 | 最高曝露 | 採用抑制・配置転換 | 椅子が減る |
| データ入力 | 上位常連 | WEF2025/世界1,043社(約-34%) | 職業計に含まれ非公表 | 同上(事務従事者に含む) | 最高曝露 | 契約更新停止(派遣・委託) | 椅子が減る |
| 経理・会計 | 上位常連 | 野村総研2015/日本 | 職業計に含まれ非公表 | 同上(事務従事者に含む) | 最高曝露 | 採用抑制・配置転換 | 椅子が減る |
| カスタマーサポート | 上位常連 | WEF2025/世界、厚労省労働経済白書案2026/米国事例 | 職業計に含まれ非公表 | 統計上は事務・サービス職に分散 | 最高曝露 | 採用抑制(米国では喪失事例あり) | 椅子が減る |
| 銀行窓口 | 上位常連 | WEF2025/世界(約-35%) | 職業計に含まれ非公表 | 統計上は事務従事者に含む | 最高曝露 | 配置転換(みずほFG事例) | 椅子が減る |
| 校正・校閲 | 中位常連 | 記事独自の主観(一次調査の裏づけ薄い) | 職業計に含まれ非公表 | 公表区分なし | 中〜最高曝露 | 契約更新停止・単価下落 | 椅子が減る |
| 営業 | 中位に散見 | 記事独自の主観 | 職業計に含まれ非公表 | 販売従事者として別区分 | 中曝露 | 影響限定的 | 消えない |
| 介護サービス | 「奪われない仕事」上位 | WEF2025/世界、厚労省需給統計 | 3.47倍 | 公表区分は医療・福祉 | 低曝露 | 人手不足が継続 | 増えている |
そもそもChatGPTは仕事の何を代われるのか|基礎知識
実務成果物での実力はどこまで来たか
日本の職場での普及はどこまで進んだか
ILOはなにを結論にしたか
ILO Working Paper 140『Generative AI and Jobs: A Refined Global Index of Occupational Exposure』(2025年5月)は、事務職(clerical workers)が全職業グループ中で最も曝露度が高いことを再確認したうえで、結論は「広範な雇用喪失」ではなく「職務内容の変容」だとしています。
会社が生成AIを正式導入していない職場で、個人アカウントのChatGPTを仕事に使うなら、学習に使わせない設定と利用規約の確認は「後回しの仕上げ」ではなく「着手の条件」です。個人情報保護委員会は2023年6月2日の注意喚起で、事業者に対し「個人データを機械学習に利用しないこと等を十分に確認すること」、一般の利用者にも規約・プライバシーポリシーの確認を求めています。まず渡すのは、個人情報を含めずに済む文書作成・要約からにしてください。
第1位|一般事務・データ入力:消えないが「入口」が閉まる
数字で見る「消えていないのに入れない」構造
日本では「解雇」ではなく「再配置」で表面化する
向き不向き
- 残りやすい人: 例外処理の判断、社外との調整、部署をまたぐ段取りを担っている人
- 厳しくなる人: 入力・転記・定型チェックが業務時間の大半を占める人、派遣・業務委託で単一業務を担っている人
第2位|派遣・業務委託の単一業務:契約更新で真っ先に効く
- 追加発注・スポット業務を止める
- 派遣・業務委託の契約更新数を減らす
- 新卒・中途の採用枠を絞る
- 既存社員を他部門へ配置転換する
向き不向き
- 厳しくなる働き方: 1社・1業務だけの常駐、成果物が文書・データのみで完結する委託
- 持ちこたえやすい働き方: 複数クライアントを持つ、要件定義や検収側にも関わる、現場立ち会いが必要
契約が切れてから動くと、一般事務0.28倍の市場に出ることになります。更新1回分(3〜6か月)を「準備期間」として使うのが現実的です。
第3位|ai なくなる仕事 ランキング上位の「対人職」は逆に増えている
| 職業 | 有効求人倍率 | 一般事務(0.28倍)との差 |
|---|---|---|
| 建築・土木・測量技術者 | 6.65倍 | 約23.8倍 |
| 介護サービス | 3.47倍 | 約12.4倍 |
| 全体(季節調整値) | 1.18倍 | 約4.2倍 |
| 一般事務 | 0.28倍 | — |
- 間違えたときに自分が法的・人的な責任を負うもの(判断そのものに責任が伴う)
- 社外の人間との調整・交渉が必要なもの
- 現場や身体を伴うもの
- 毎回手順が変わるもの
厚生労働省『令和8年版 労働経済の分析』(労働経済白書)案は、AIが「雇用の創出、喪失の両方につながる可能性」があるとしつつ、「雇用の大幅な減少が生じているとの裏付けはされていない」と分析しています。喪失事例として挙げたのは米国のソフトウェア開発とカスタマーサービスに限定されており、円滑な労働移動とリスキリング支援を重視する方針です(共同通信 2026年9月4日報道/9月中に公表予定)。
第4位・第5位|校正・校閲と、テキスト完結型のフリーランス業務
第4位|校正・校閲などのチェック業務
第5位|テキスト完結型のフリーランス業務
自分は何%危ないのか?|AI曝露度スコアの計算手順
手順
- 厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag(日本版O-NET)」で自分の職業ページを開く。約500職業(2024年4月時点で531職業)がタスク単位で公開されており、無償で検索・データダウンロードができます。
- 掲載されている「タスク」一覧から、自分が実際に担っている5〜10個を書き出す。
- 直近1週間の実働時間を各タスクに配分し、時間比率 wi(合計1.0)を出す。
- 各タスクを4軸で0〜2点採点する。
- A 定型性: 毎回同じ手順=2 / 都度違う=0
- B テキスト完結度: 入出力が文章・表・画像だけで完結=2 / 現場や身体を伴う=0
- C 責任の重さ(逆点): 法的責任・人命に関わる=0 / やり直せば済む=2
- D 社外調整(逆点): 交渉・調整が必須=0 / 不要=2
- タスクごとの素点 si = A+B+C+D(0〜8)を出し、==曝露度 = Σ(wi × si) ÷ 8 × 100(%)== を計算する。
計算例1|経理担当Aさん(曝露度62%)
| タスク | 時間比率wi | A定型 | Bテキスト | C責任 | D調整 | 素点si | wi×si |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 伝票入力・仕訳 | 0.35 | 2 | 2 | 2 | 2 | 8 | 2.80 |
| 請求書発行・送付 | 0.20 | 2 | 2 | 2 | 1 | 7 | 1.40 |
| 月次試算表の作成 | 0.20 | 2 | 2 | 1 | 2 | 7 | 1.40 |
| 税理士・監査対応 | 0.15 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0.15 |
| 部門長への予算折衝 | 0.10 | 0 | 1 | 1 | 0 | 2 | 0.20 |
| 合計 | 1.00 | 5.95 |
計算例2|Web制作フリーランスBさん(曝露度74%)
| タスク | 時間比率wi | A定型 | Bテキスト | C責任 | D調整 | 素点si | wi×si |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 記事・コピーの執筆 | 0.40 | 1 | 2 | 2 | 2 | 7 | 2.80 |
| バナー・画像の制作 | 0.25 | 1 | 2 | 2 | 2 | 7 | 1.75 |
| コーディング・実装 | 0.20 | 2 | 2 | 2 | 2 | 8 | 1.60 |
| クライアント要件ヒアリング | 0.10 | 0 | 1 | 1 | 0 | 2 | 0.20 |
| 公開前の最終検収・責任確認 | 0.05 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0.05 |
| 合計 | 1.00 | 6.40 |
判定の読み方
| スコア | 判定 | 次にやること |
|---|---|---|
| 70%超 | 2〜3年で職務内容が丸ごと書き換わる | 今すぐ検収側・設計側のタスクを取りに行く |
| 40〜70% | 職は残るが人数が減る | C軸・D軸が0点のタスクの時間比率を意図的に増やす |
| 40%未満 | AIより人手不足の影響が大きい | AIを使って処理量を増やす側に回る |
このスコアは、公的統計の分類(job tagのタスク定義)とILOの曝露度の考え方を組み合わせたこの記事独自の目安です。公的機関が発表した指標ではありません。順位を鵜呑みにするより自分の業務構成で考えるための道具、という位置づけで使ってください。
あなたの会社で椅子が減り始めているか|兆候診断チャート5問
- Q1 自部署の新卒または中途の採用枠が、2年連続で縮小した
- Q2 派遣社員・業務委託の契約更新が止まった、または更新数が減った
- Q3 部署名や職種名が「事務/業務/オペレーション」系から「企画/デザイン/プロセス」系へ改称された
- Q4 全社共通の生成AIツールやRPAの導入通知が来た、または利用ログを取ると告知された
- Q5 自分の主要業務の手順書・マニュアルが最近整備・電子化された(=AIに渡す準備)
YESの数で判定
| YESの数 | 判定 | 起こすべき行動 |
|---|---|---|
| 0〜1個 | いまの時点では兆候なし | 年1回、同じ5問で再診断する |
| 2〜3個 | 3〜5年スパンで配置転換の候補 | 教育訓練休暇給付金の受給要件を今のうちに確認する |
| 4〜5個 | 2〜3年以内に職務再編の対象 | 専門実践教育訓練給付(最大80%)の対象講座を今期中に申し込み、キャリアコンサルティングの受講記録を残す |
制度を使う流れ|リスキリング支援の申込み手順
給付の内訳
- 受講中: 50%
- 修了後: +20%
- 資格取得等の要件を満たした場合: +10%
申込みまでの流れ
- 対象講座を厚生労働省の教育訓練講座検索システムで探す(専門実践/特定一般/一般で給付率が異なります)
- ハローワークで訓練前キャリアコンサルティングを受け、ジョブ・カードを作成する(原則、受講開始の1か月前まで)
- 受講開始前日までに、ハローワークへ支給申請の手続きを行う
- 受講中・修了後に、それぞれ支給申請する
支給要件(雇用保険の被保険者期間、前回受給からの間隔など)は個別事情で変わります。給付率や要件は改正が続いている分野なので、必ず厚生労働省の公式ページとハローワークの窓口で最新の条件を確認してください。この記事の内容は2026年9月時点で公表されている情報に基づく整理です。
メリットと注意点|ランキングを「使う」ための整理
メリット
- どんな性質の業務が曝露しやすいか(定型・テキスト完結)を短時間でつかめる
- 自分の業界以外の動きに気づける(WEF 2025のような国際調査は先行指標になる)
- 社内でAI活用を提案するときの、共通言語として使える
注意点
- 発表年・対象国が混在しており、2015年の推計が「最新」として流通していることがある
- 職業単位の推計は、タスクベース(OECD 2016で平均9%)と比べて約5倍に過大評価されうる
- 日本の解雇規制のもとでは「消滅」ではなく採用抑制・配置転換として表れるため、順位と体感がずれる
- 順位の一部は、一次調査ではなく記事の書き手の主観で並べられている
生成AIを実際に仕事へ使うときの線引き
- 利用規約とプライバシーポリシーを確認する
- 入力内容を学習に使わせない設定にする
- 会社の社内ルール(利用可否・申請要否)を確認する
- 最初に渡すのは、個人情報を含めずに済む文書作成・要約に限る




